葉室麟の円熟作『霖雨』が新潮文庫に登場 咸宜園を開いた儒学者・広瀬淡窓を描く長編

直木賞作家・葉室麟さんの長編『霖雨』が、10月28日に新潮文庫から発売されました。主人公は、江戸時代に日本最大の私塾「咸宜園」を開いた広瀬淡窓です。困難に直面しても歩みを止めず、誇り高く生きた人々を描いた作品で、新潮社は「傑作長編」と紹介しています。

作家が長年温めてきた題材、広瀬淡窓
広瀬淡窓は、豊後日田(現在の大分県)で咸宜園という私塾を開いた儒学者です。葉室麟さんにとって淡窓は、「五十歳で歴史・時代小説を書き始めた当時からいつかは書いてみたいと温めていた題材」でした。
作中の淡窓は、さまざまな困難に直面します。その姿を描くことについて、葉室さんは「どんなに辛いことがあっても、決して諦めてはいけない――。そんな思いを伝えたかった」と語っていたそうです。
解説は文芸ジャーナリスト・内藤麻里子さん
文庫版の解説は、文芸ジャーナリストの内藤麻里子さんが担当しています。内藤さんは「葉室麟という作家は、物語に託して人間の生きる道を描き出すことが多い。人としての「矜持」や「志」、「仁」などについて深いまなざしを注ぐ。(中略)本作『霖雨』もまたそういう一作だが、もしかしたらその美学が一番端的に表れているかもしれない」と評しています。
長い雨のような苦難のなかで――物語のあらすじ
舞台は江戸時代の豊後日田です。広瀬淡窓が開いた咸宜園は日本最大規模の私塾で、全国から入門者が集まり、その名は天下に知れ渡っていました。ところが、名声を求める代官が塾に介入し始めます。
理不尽な仕打ちと度重なる困難を前に、淡窓と弟の久兵衛は、まるで長い雨が降り続いているかのように感じます。そんななか、若侍の臼井佳一郎が美しい姉とともに入塾してきます。やがて、大塩平八郎の乱という大きな波が押し寄せることになります。
権力と時代に振り回されながらも、歩みを止めずに誇り高く生きた人々を描いた一作で、新潮社は本作を葉室文学の円熟作と位置づけています。
著者・葉室麟さんについて
葉室麟(はむろ・りん)さん(1951-2017)は北九州市小倉の生まれです。西南学院大学を卒業後、地方紙記者などを経て、2005(平成17)年に『乾山晩愁』で歴史文学賞を受賞し、作家としてデビューしました。その後、2007年に『銀漢の賦』で松本清張賞、2012年に『蜩ノ記』で直木賞、2016年に『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で司馬遼太郎賞を受賞しています。
「地方の視点から歴史を描く」を信条に、精力的に作品を執筆しました。著書には『いのちなりけり』『秋月記』『橘花抄』『春風伝』『玄鳥さりて』など多数があり、『蜩ノ記』と『散り椿』は映画化されています。
書籍情報
- タイトル:霖雨
- 著者:葉室麟(はむろ・りん)
- 発売日:10月28日
- 造本:文庫版
- 定価:880円(税込)
- ISBN:978-4-10-127376-1
- 発行:新潮社(新潮文庫)
出典:株式会社新潮社


